4人のギタリストに聞く「協奏曲の夕べの聴きどころ」インタビュー           (インタビュアー木村)
 フォレストヒル音楽工房のユニークな企画として2003年2月1日(土)にフォレストヒルミュージックアカデミーギター科4人の講師による「ギター協奏曲の夕べ」を主催いたします。会場はおなじみのあいれふホールです。この演奏会ではギター協奏曲として代表的な4つの作品をピアノ伴奏により演奏します。どの作品もそれぞれに素晴らしいもので、一夜にしてこれらの作品が聞けるということもめったにない機会でしょう。ピアニストは松村雅亘氏還暦記念コンサートの時にもお願いした夏川由紀乃さんと藤本絹子さんです。生徒さんはぜひ先生の応援に会場に足をお運びいただきたいと思います。奏者の皆さんにこの演奏会に臨むそれぞれの思いについてお聞きしてみました。(森岡)              

池田慎司/j.ロドリーゴ:アランフェス協奏曲

     
   
     


―曲の魅力、聴きどころを教えてください。
池田先生(以下I):多分ほとんどのお客さんはこの曲を知ってるんで、イメージをある程度持っていると思うんですよね。言うとすれば、やっぱりもともとはオーケストラとギター一本で、ある意味、共演って、競うって書くこともあるけど、はりあったり、一緒に作っていったり、というアンサンブルとしての魅力がありますよね。後はコンチェルトって、途中でギターソロが出てくるんですよ、カデンツァって言うんですけど、2楽章のカデンツァ、ここが一番ギタリストが勝手にできるところだから。そのカデンツァが魅力ですよね。
―苦心している点は?
I:全部(笑)。前から弾いていた曲で、1楽章だけは。苦心したところといえば、前の癖を取るのが大変だったな。留学中に楽譜を手に入れて、1楽章だけとりあえず指だけさらって勢い任せに弾いてきたんですよ。だから今までの指で覚えてたのを真っ白にして、ちゃんと楽譜を読みなおして練習しなおしたらやっぱり大変だったな。今はそれなりにこんな感じで弾こうというのはできてきましたけどね、当然、当日にはまた変わると思いますけど。あと、あまりにも見本が多すぎるんで、CDが。それを聞いて育ってるでしょ、好きな曲だからなおさら聴いてるし、そういう知らないうちに洗脳されてる耳を白紙に戻すっていうのがすごく大変で。
―当日はどういうステージにしたいですか。
I:出だしですからね、僕は。後の人たちに不安がらせない華やかなステージにしたいですよね。僕が、皮きりにっていう。先に続きそうな、流れが。そういう勢いにのった演奏ができたらいいなと思います。相手に渡すのって大変ですよね。でもうまくいくと超盛り上がりますよね。自分一人のテンションじゃないから。とにかく勢いを持ってやりたい。
―意気込みを。
I:なにかやってやる、という。それがなにかは出てみないとわからないけど。出てみて、自分のテンションが上がって、その曲に入れて…。いい意味で余裕を持って熱い演奏をしたいですよね。頑張るぞー。

松下隆二/H.ヴィラ=ロボス:ギター協奏曲

     
   
     


―曲の魅力、聴きどころを教えてください。
松下先生(以下M):ヴィラ=ロボスとブラジルという国が持っている二面性、すなわちワイルドさと繊細さです。
―苦心している点は?
M:全てにおいて。
―どんなコンサートにしたいですか。
M:ヴァイオリンの学生達は“ソナタ”等の大規模な曲に取り組むより前に、先に協奏曲(メンデルスゾーンのヴァイオリン・コンチェルト等)を練習したりするそうです。
2月1日のコンサートを通じて、ギターを愛好する人たちが“協奏曲”というものをそんな風に身近に感じてくれたらいいな、と思っています。
―意気込みを。
M:“尻込み”じゃなくて“意気込み”ですね?(笑)
大曲を演奏する時にはその曲にみあうだけの“人間的な器”が演奏者に要求されると思います。今回こういう機会を頂いてこの曲に取り組むにあたって、「音楽によって成長させられている自分」というものを感じています。どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください。

竹内竜次/MM.ポンセ:南の協奏曲

     
   
     

―曲の魅力・聴きどころを教えてください。
竹内先生(以下T):ポンセの持ってる独特な、世紀末的なほの暗い、だけどちょっと情熱的な・・・。
南の協奏曲って言うじゃないですか。だからスペインチックな部分もあるんだけど、もととポンセの持ってる音楽の色合いがすごい濃い作品ではないかと思います、ポンセの作品の中でも。分類すると、ポンセの作品て真似ることがすごく上手な人だったから、スカルラッティ風の作品とか、ちょっと古典的なものとかロマンティックなものとか、っていうのがあるんですけど、その中でも特にポンセ自身の持つ音楽、という分類、たとえば「ソナタ三番」もそうだし、「南の協奏曲」もそうだと思うんですけど。そういうところを味わってもらいたいです。
―苦労した点は?
T:テクニック的にむちゃくちゃ難しいというところはないので。さっき言った、ポンセらしさがどのくらい出せるかっていうのが、これから苦労していかなくちゃいけないポイントではないかと思います。
―ポンセの魅力というのはどういうところなんですか。
T:一番始めに話したことと共通するんだけど、すごくセゴビアというギタリストと親交があって、一番セゴビア的な音楽を書いた、ちょっと今の時代と違う、セゴビアの生きたときの、一番ギターがいきる作品をたくさん作った人だと思います。パリにみんなが集まって、パリで音楽を吸収していく面が多かった時代なんだけど、思いっきり自分のカラーが強い人だったから、個性的な作風があるでしょ。そこのヨーロッパの音楽と自分の生まれた国の音楽とか個性を融合しているところが面白いなと。それはポンセに限らずそうだと思うんですけど。
―意気込みを。
T:自分の好きな作曲家でもあるし、今年ポンセを中心に勉強することが多かったので、ポンセの音楽っていうものを充分聴かせることができたらなあと思ってます。

中野義久/M.ジュリアーニ:ギター協奏曲第1番イ長調Op.30

     
   
     

―曲の魅力・聴きどころを教えてください。
中野先生(以下N): この曲を初めて耳にしたのは16・7の頃でしょうか、FMで放送されたJ.ウィリアムズのLPでした。どこまでも明るく力強く喜びと生命力に満ちた曲、という印象だったと思います。最近その演奏がCDで再発されたので聴いてみました。「そうそうここれ」と、厚顔のもとい紅顔の美少年だった頃のギターばかりひいていた青春時代をたちまち思い出しました。練習を重ねるにつれて前記の印象が深まるところもありますがまた難しさも感じられますがそれはまた別の項目に譲りましょう。曲の雰囲気としては、乱暴に言うとハイドンやモーツァルトの曲から深刻な所や陰影を取り去った感じ、といったところでしょうか。第二楽章などは短調ではありますが悲劇的ではなく歌(イタリア後で言うところのカンタービレ、ですね)に満ちていると感じます。 第一・三楽章は、古典的なキッチリとした形式の中で感興溢れる喜びの歌を綴っていく、と表現したらわかっていただけるでしょうか?
―苦心した点は?
N:苦心した、なんてまだ言えません。今まさに苦心しているところは沢山あります(汗)。音楽の中の、満ち満ちている喜びや溢れんばかりの生命力を第三者に感じていただくには自分自身がそうでないといけませんし、それを表現するためには技術・技巧で苦労する段階は乗り越えてなければなりませんし、現実はなかなかそうではないし…というところが苦労しているところですね(タメ息)。
―どんなコンサートにしたいですか?
―意気込みを。

N:この二つは切り離しにくいですね。他の三人の若先生達の足は引っ張りたくない、という気持ちはすごくあります。別の気持ちとしては、ここまでハイレベルな演奏家が育ってくれたことに感慨深いものがあります。また、同僚として同じステージに立てることに喜びを感じます。勿論、なかばコンクールみたいなものですからプレッシャーはすごくあります。でもそれはみんな一緒ですね。とにかく、僕が活動を始めた20年前には考えられなかったことですから。みんなの努力とモリオカさんの支えに感謝したいと思います。意気込みですか?作品の魅力が少しでも皆さんに伝わるように、僕の現在の実力で精一杯やらせていただきます。